研究紹介

当チームでは、日本語のプロソディの獲得を、大きく分けて二つのテーマに注目して研究しています。
第一は、日本人の乳幼児のプロソディの獲得の研究、第二は、日本語の文理解におけるプロソディの役割の研究です。

プロソディの獲得過程の研究

 日本語は、モーラリズムの言語といわれています。モーラというのは、言葉を話すときの長さの単位で、日本語では俳句や短歌で数える拍、「かな」でいうと一文字に相当します。
 日本語の話者は、個々のモーラが同じ長さになるように話すといわれ、それが日本語特有のモーラリズムを形成するといわれています。
 英語やフランス語などの欧米の言語の獲得では、言語のリズムは言語獲得の初期に大変重要な役割を果たすといわれていますが、モーラリズムがどのように獲得されるか、またモーラリズムを獲得することが日本語の語彙や文法など他の側面の獲得にどのような役割を果たしているのかはよくわかっていません。
 当チームでは、様々な研究方法を用いて、日本人の乳幼児が「モーラ」という単位をどのように認知しているのか、大人と子どもでは認知の仕方は違うのか、などを調べています。

 研究には、乳児や幼児にいろいろな音声刺激を聞いてもらい、その反応を調べる音声知覚調査、乳児や幼児にいろいろな言葉や文を言ってもらい、その発音が大人とどのように違うかを調べる発話の調査、大人が子どもに話しかけるとき、どのような話しかたや言葉を使うかを調べるマザリーズの解析などの方法を用います。
 近年では、fMRI、脳波測定、近赤外線分光法などのように、人が何かを見たり、聞いたり、考えたりしているときに脳がどのような活動をしているかを、脳の外から測定できる技術が発達してきました。特に、脳波測定や近赤外線分光法は、乳児や幼児に適した測定方法が開発され、様々な研究成果が報告されています。
 当チームでは、脳科学総合研究センター内の他の研究室と共同して、これらの技術を言語発達の研究に活用しています。

日本語の文理解におけるプロソディの役割の研究

 私たちは、普段何の意識もせずに文を話したり、人の話す文を理解したりしています。しかし、文の理解するためには、連続した音声を音節や単語として切り出し、単語の意味を抽出し、単語の連続を句に文節し、句の統語構造を解析するなど、大変複雑な情報処理が必要になります。文を理解するのには、どういう情報をどういう順番で処理しているのか、様々な情報が異なる情報を与えるときにはどのようにしてその矛盾を解決しているのか、などを調べるのが文理解の研究です。
 当チームでは、文理解にプロソディが及ぼす影響に注目して研究しています。日常的に聞く文には、普段気づかない曖昧さが多く含まれています。例えば、「赤いリボンと箱」は「赤いリボン」と「箱」と言えば赤いのはリボンだけ、ということになりますが、「赤い」「リボンと箱」と言えば、リボンと箱の両方が赤いという意味になります。

 近年の研究で、プロソディで意味が変わるこのような文の理解の仕方が、5、6歳になるまでの幼児と大人とでは、少し異なるということが分かってきました。 当チームでは、様々な曖昧文を幼児に聞いてもらい、プロソディや他の情報で意味の変わる文をどのように理解しているかを調べる研究を行っています。研究には、いろいろな絵から正しい絵を選んでもらう選択調査、絵本を見ながら質問に答えてもらう調査などの方法などを用いています。文を聞いている間に乳児や幼児が絵のどこを見ているかを測定できる装置(眼球運動測定装置)を用いることもあります。

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